ウエストホームズ談話室

783835
ホームズファンのための談話室です。どうぞおくつろぎください。  

ドイルとルブランの間に本当は何があったのか? - オーバーロード

2018/07/15 (Sun) 21:25:04

 私は昨年5月に「長年の疑問」というタイトルで投稿した者です。その時の文章は『高名の依頼人』の中で極悪人のグルーナー男爵によってひどい目に合わされたフランス人の探偵の名前が「ル・ブラン」であったことから、これはコナン・ドイルがシャーロック・ホームズを無断借用して自分のキャラクターであるアルセーヌ・ルパンの引き立て役にしたモーリス・ルブランへのささやかな意趣返しであるに違いないという趣旨のものでした。
 今でもその可能性が一番高いとは思っていますが、エドガー・アラン・ポーの『マリー・ロジェの秘密』の中に登場する香水屋の名前が「ル・ブラン」であったことを知り、もしかしたらこちらが元ネタである可能性も浮上しました。それゆえ、「意趣返しに違いない」とまでは言えないと言うのが現状の到達点です。

 とはいえ、ドイルが意趣返しをやったか否かは別として、はたしてドイルとルブランという推理小説界の巨頭同士の間で実際に何があったのかは非常に大きな問題です。この論点に関しては「ドイル(又はその関係者)がルブランに抗議して、ルブランは探偵の名前をアナグラムでエルロック・ショルメと変えた(そしてさらに間抜けに描いた)」とする通説と「ドイルは特に何もせず、ルブランが自主規制した」という有力説が対立していますが、興味深いのはその多くがルブラン側の論者の証言や研究に由来していることです。
 どういうわけかドイルに関する伝記や研究書、シャーロック・ホームズの研究書などにも、両者の間のトラブルについては何も語っていないものがほとんどであり、非常に有名なトラブルの割にはドイル側の研究はお寒いものになっています。
 なぜそうなってしまっているのか定かではありませんが、一方当事者であるルブラン側からの研究のみがこの問題の指標になっているのは公平とは言えません。もうそろそろシャーロッキアンの手による「ドイル対ルブラン」問題への研究がなされる時であると思います。さもないと、一方的にルブランに有利な説ばかりが流布されてしまうおそれがあります。実際、ルパンファンの間ではドイルの狭量さを嘲る意見や、責任はルブランにはなくショルメをホームズと訳してきた翻訳家にあるという説が喧伝されています。
 なお、私はルブランが当初は露骨に「シャーロック・ホームズ」という名称を使っていたこと、その後も自己のエッセイ『アルセーヌ・ルパンとは何者か?』でも「『エルロック・ショルメ』ことシャーロック・ホームズ」と書いていたことなどから、全責任は翻訳家にあるという擁護論は成り立たないと考えています(むしろ、作者の真意をとらえた意訳というべきだろう)。

 最後に軽めの話題ですが、今年は最広義のルパン陣営の大攻勢が行われているみたいですね。どうやらルパンの方がサブカルチャーでは利用しやすいようで、『快盗戦隊ルパンレンジャーVS警察戦隊パトレンジャー』、『ルパン三世』の第5期、『ペルソナ5』(「心の怪盗団」という集団が活躍する作品。リーダーが用いる分身(ペルソナ)が「アルセーヌ」という名前)などが放送されています。サブカルの分野では少々ホームズは押され気味です(『ルパンレンジャー』の映画に「エルロック・ショルメ」が出るそうですが)。

名前
件名
メッセージ
画像
メールアドレス
URL
文字色
編集/削除キー (半角英数字のみで4~8文字)
プレビューする (投稿前に、内容をプレビューして確認できます)

Copyright © 1999- FC2, inc All Rights Reserved.